生理学
1.生理学の基礎
A.生理学の特徴
●細胞にとっての環境である細胞外液の状態を(内部環境)という。
●内部環境が安定に保たれる仕組みを内部環境の(恒常)性=(ホメオスタシス)という。
B.細胞の構造と働き
●細胞は(細胞膜)、(核)、(細胞質)よりなる。
●細胞の主要な構成成分は、水、(タンパク質)、脂質、糖質、核酸などである。
B-a.細胞膜の構造と機能
●細胞膜の働きは細胞内外の物質の移動で、構造は(リン脂質)の(二)重層膜である。
●細胞膜は(半透性)の性質があり、水、酸素や二酸化炭素などは通りやすい。
●細胞膜は(イオン)に対して(選択)的な透過性を持つ。
●(脂質)に溶けやすい物質は細胞膜を通りやすい。
B-b.細胞質と細胞小器官
●(ミトコンドリア)は、ATP(アデノシン三リン酸)を合成する。
●小胞体は、リボソームが並ぶ(粗面)小胞体と、リボソームを持たない(滑面)小胞体がある。
●(ゴルジ装置)は、小胞体から出るタンパク質を濃縮して分泌顆粒の生成をする。
●(リボソーム)は、タンパク質合成の場である。
●(中心体)は、細胞分裂時に、染色体を引き寄せる働きがある。
B-c.核、DNA、RNA、タンパク質合成
●核には遺伝子情報を持った(DNA)が存在する。
●DNAは染色質の形で核内にあるが、細胞分裂の際には凝縮し(染色体)を形成する。
●ヒトには(46)本の染色体がある。
●DNAは塩基同士で結合して(二重らせん)構造を形成する。
●DNAを構成する塩基は(アデニン)、(グアニン)、(チミン)、(シトシン)である。
●RNAを構成する塩基は(アデニン)、(グアニン)、(ウラシル)、(シトシン)である。
●タンパク質合成の流れは、➡核内でDNAの二重らせんの一部がほどけて一本鎖となる。
➡その塩基配列を写し取ったmRNAが合成される。これを(転写)という。
➡核膜孔より出て粗面小胞体上にある(リボソーム)と結合する。
➡遺伝子情報のアミノ酸配列通りにtRNAが細胞質内から必要な(アミノ酸)をリボソームに運搬する。
➡アミノ酸を結合しタンパク質が合成される。これを(翻訳)という。
C.物質代謝
●(同化)とは、細胞内で材料となる物質を取り入れ、生体の構成成分を合成することである。
●(異化)とは、細胞内で栄養素を分解しエネルギーを取り出したり、分解産物や老廃物を出すこと。
●(物質代謝)とは、同化異化の過程で数々の物質を作り出し、またエネルギーを放出すること。
●細胞がグルコースを分解してエネルギーを取り出す過程は、酸素を取り入れて二酸化炭素を出すので(内呼吸)という。
●グルコースは細胞質内で諸酵素の働きによって(ピルビン酸)となる。
●酸素を必要としない過程を(解糖)という。
D.体液の組成と働き
a.体液の区分
●体液量は、体重の約(60)%である。
●細胞内液は、体重の約(40)%である。
●細胞外液は、体重の約(20)%である。
●細胞外液は、体重の約15%である(間質液)と、体重の約5%である(血漿)である。
b.体液のイオン組成
●カリウムイオンは、細胞(内)液中に多い。
●タンパク質陰イオンは、細胞質(内)液中に多い。
●ナトリウムイオンは、細胞(外)液中に多い。
c.体液のpH
●体液のpH値は、約(7.40)±0.05である。
d.体液の浸透圧
●体液の浸透圧は、約(290)m0sm/ℓである。
e.体液量と水分の出納バランス
●健康成人の体液量は、常にほぼ(一定)である。
E.物質移動
●物質濃度の高い方から低い方へ移動する現象を(拡散)という。
●半透膜を介して水の分子が溶質濃度の高い方へ移動する現象を(浸透)という。このとき生じる圧力を(浸透圧)という。
●エネルギーを利用し濃度勾配に逆らって輸送する仕組みを(能動輸送)という。
●(膜動輸送=サイトーシス)には、物質が細胞内に取り込まれる食作用と、液体を取り込む飲作用と、細胞の中から外へ物質を放出する開口放出がある。
●多孔質のものを通過すると大きい粒子が残る。これを(濾過)という。これには圧力が必要とする。
4.消化と吸収
A.消化と吸収
●消化は(機械)的消化〔=消化管の運動〕と(化学)的消化〔=消化液分泌〕の組み合わせにより行われる。
B.消化管の運動
a.咀嚼
●食物は口腔内で(咀嚼)運動により食物を嚙み砕き唾液と混和する。
b.嚥下
●嚥下運動の第1相は(随意)運動で、第2.3相は(反射)運動である。
●第1相を(口腔)相、第2相を(咽頭)相、第3相を(食道)相という。
●嚥下運動の反射中枢は(延髄)である。
●第1相は(舌)を使って食塊を咽頭に送る。
●第2相では軟口蓋は(挙上)、喉頭蓋は(閉鎖)、(舌根)を押し上げ、食塊が食道に押し出される。
●第3相は食道の(蠕動)運動によって食塊を胃に収容される。
c.消化管の運動とその調節
●消化管の壁は部位によって異なるが基本的いは内側から(粘膜)、粘膜下層、(筋層)、(漿膜)の順に配列する。
●筋層の内側の(輪走)筋、外側の(縦走)筋の2層の平滑筋よりなる。
●消化管の内側と外側の平滑筋の間には筋層間神経叢(アウエルバッハ)神経叢がある。
●粘膜下層と内側の平滑筋層の間には粘膜神経叢(マイスネル)神経叢がある。
●筋層間神経叢と粘膜下神経叢を合わせて(壁内)神経叢という。
(1)胃運動
●胃の入り口を(噴門)、出口を(幽門)という。
●胃は大部分を占める(胃体)と幽門に向かって細くなった(幽門前庭)に分けられる。
●胃体のうち噴門よりも左上に横隔膜に沿って膨れた部分を(胃底)と呼ぶ。
①内容物の受け入れ
●胃に食物が入ると胃壁は弛緩し胃容量を増やす。これを(受け入れ弛緩)という。
②蠕動運動
●胃に食物が入ってしばらくすると、(蠕動運動)が始まる。
●蠕動は、毎分約(3)回の頻度で胃体上部に始まり、ゆっくりと幽門に向かって伝えられる。
③内容物の排出
●蠕動運動は胃底から幽門に向かい、胃内容物は幽門から(十二指腸)に送りだされる。
●(副交感)神経の(迷走)神経により、胃の緊張性を高め蠕動運動を促進する。
●(交感)神経により、胃の蠕動運動を抑制する。
●胃内容物を反射性に吐出する運動を(嘔吐)という。
●咽頭、舌根、胃粘膜を機械的あるいは化学的に強く刺激されると、(延髄)の嘔吐中枢が活動する。
➡嘔吐中枢の活動により、悪心、唾液分泌が起こり、食道が(弛緩)、胃が(弛緩)して噴門が開く。
➡ついで痙攣的呼吸運動により(横隔膜)と(腹筋)が収縮して腹腔内圧を高め胃の内容物を外へ吐き出す。この時、咽頭蓋は(閉鎖)している。
●延髄には(化学受容器引金帯)と呼ばれる部分があり、ここが化学的に刺激されると、その情報が嘔吐中枢に伝えられて嘔吐が起こる。
(2).小腸の運動
●小腸は(十二指腸)とそれに続く(空腸)、(回腸)よりなる。
●十二指腸には膵管と総胆管が開口しており(膵液)と(胆汁)が流入する。
●小腸粘膜からは(腸液)が分泌される。
●小腸の運動は、輪走筋による(分節)運動、縦走筋による(振子)運動、輪走筋と縦走筋による(蠕動)運動に分けられる。
●小腸運動は副交感神経により(促進)され、交感神経により(抑制)される。
●胃に食物が入ると、反射的に回腸の蠕動運動が盛んになり(回盲弁)が開く。これを(胃ー小腸)反射という。
(3).大腸の運動
●大腸は(盲腸)、(結腸)、(直腸)に区分される。
●大腸では、主に(水)、(Na⁺=ナトリウムイオン)の吸収をし、固形物となって直腸に送られ、体外に排出される。
①大腸運動
●大腸は、分節運動、蠕動運動の他に、盲腸から上行結腸にかけて(逆蠕動)が起こる。
●横行結腸からS状結腸にかけ同時に収縮して一気に直腸へ運ぶ運動が1日数回起こる。これを(大蠕動)といい、摂食後の(胃ー大腸)反射によるものである。
②大腸運動の調節
●大腸の運動は副交感神経で(促進)され、交感神経で(抑制)される。
●内肛門括約筋は、副交感神経によって(弛緩)し、交感神経によって(収縮)する。
●外肛門括約筋は随意筋で、(体性運動)神経が支配をうける。
d.排便
●糞便によって直腸壁が伸展されると(排便)反射が引き起こされる。
●直腸壁が伸展されると(骨盤)神経の求心路を通って(腰仙髄)の排便中枢に伝わる。
●遠心路は(骨盤)神経の副交感神経が亢進してS状結腸、直腸を弛緩させる。
➡(下腹)神経の交感神経が抑制されて(内肛門括約)筋が弛緩される。
➡(陰部)神経の体性運動神経が(外肛門括約)筋が弛緩する。
C.消化液
(1).唾液
①唾液の成分・作用
●唾液の成分は(水分)、唾液アミラーゼ(プチアリン)、(ムチン=粘液)よりなる。
●唾液アミラーゼは(デンプン)を(マルトース)に分解する。
●(ムチン)は嚥下の促進、口腔粘膜の保護、他に味覚を起こす、抗菌作用などがある。
②分泌調節
●唾液腺は左右に1対づつ(耳下)腺、(顎下)腺、(舌下)腺がある。
●耳下腺は(舌咽)神経支配で、舌下腺と顎下腺は(顔面)神経神経である。
●副交感神経の亢進により(漿液)性唾液を分泌する。交感神経の亢進により(粘)液唾液を分泌する。
●唾液分泌中枢は(延髄)にある。
●食塊の刺激により、感覚性神経を通って唾液分泌中枢に伝えられ、自律神経を働かせて反射性に唾液分泌を促す(無条件)反射と、本来唾液分泌を起こさない感覚性刺激、たとえば眼や耳からの感覚性刺激によっても食塊刺激と組み合わせて条件づけられて起こりうる(条件)反射がある。
(2).胃液
①胃腺の構成
●胃液は胃粘膜にある(胃腺)から分泌される。
●主細胞は(ペプシノゲン)を分泌する。
●副細胞=(粘液細胞)は(ムチン)を分泌する。
●壁細胞は(塩酸)を分解する。
●内分泌細胞は消化管ホルモン(ガストリン)を分泌する。
②胃液の成分・作用
●胃液は無色透明で1日1~3リットル分泌され、pHは(1~2)で強い酸性である。
●(塩酸)は、ペプシノゲンを活性化して(ペプシン)にする。
●(ペプシン)は、タンパク質を(ペプチド)に分解する。
●(ムチン)は、胃粘膜の保護をする。
●ストレス時に分泌される(副腎皮質ホルモン)は、胃の粘液分泌を抑制する。
③胃液分泌の調節
●副交感神経の迷走神経は、胃液を(促進)し交感神経は胃液分泌を(抑制)する。
●ガストリンは胃液分泌を(促進)し、セクレチンやGIPは胃液分泌を(抑制)する。
(3).膵液
●膵液を分泌する外分泌腺は、腺房細胞が集まった(腺房)とそれに続く(導管)とからなる。
●導管は集まって(膵管)となり、(総胆管)と合流して十二指腸に開口する。
①膵液は無色透明で1日約1.5リットル分泌され、pHは約(8)で弱アルカリである。
●膵液は消化酵素と胃内容物を中和させる(重炭酸ナトリウム=NaHCO₃)を含む。
●(アミラーゼ)は、デンプンを(マルトース)に分解する。
●(トリプシン)と(キモトリプシン)は、タンパク質を(ペプチド)に分解する。
●(リパーゼ)は、脂肪を(脂肪酸)と(モノグリセリド)に分解する。
●(ヌクレオチド)は核酸を分解する。
●セクレチンとコレシストキニンは、膵液の分泌を(促進)する。
(4).胆汁
●胆汁は絶えず(肝細胞)で生成される。
●胆汁は、(肝管)、(胆嚢管)を経て胆嚢に送られる。
●胆汁は、胆嚢で蓄えられ(濃縮)される。
●総胆管の十二指腸開口部にある(オッディーの括約筋)が弛緩して、胆汁は十二指腸に排出される。
①胆汁の成分・作用
●胆汁は黄褐色で(肝臓)から1日約500ml分泌される。
●胆汁は(胆汁酸)と(胆汁色素)を含み、(消化酵素)は含まない。
●胆汁酸は脂肪を(乳化)して消化酵素の働きを助ける。
●胆汁色素は(ビリルビン)の事で、老廃赤血球の(ヘモグロビン)に由来の黄色色素。
②胆汁の分泌調節
●セクレチンにより胆汁分泌は(促進)される。
●コレシストキニンは(胆嚢)を収縮させ、胆汁を排出する。
●(セクレチン)は重炭酸イオンや水分を富む膵液分泌を促進する。
●(コレシストキニン)は消化酵素に富む水分分泌を促進する。
(5)腸液
●腸液は、十二指腸上部にのみ分布する十二指腸腺(ブルンネル)腺と小腸全体に分布する腸腺(リーベルキューン)腺より分泌される。
①腸液の成分・作用
●腸液は(弱アルカリ性)の液で1日約1.5~3リットル分泌される。
●(アミノペプチダーゼ)は、ペプチドをアミノ酸に分解する。
●(マルターゼ)は、マルトースをグルコースに分解する。
●(リパーゼ)は、脂肪を脂肪酸とモノグリセリドに分解する。
●(ヌクレアーゼ)は、核酸を分解する。
●(エンテロキナーゼ)は、トリプシノゲンをトリプシンにする。
●副交感神経活動の亢進により腸液の分泌は(促進)される。
(6)大腸液
●大腸液はアルカリ性で(消化酵素)を含まないが(粘液)に富む。
b.消化管ホルモン
●消化管粘膜にある内分泌細胞で分泌され、消化管の機能を促進または抑制するホルモンを(消化管=胃腸)ホルモンという。
●主な消化管ホルモンには、(ガストリン)、(セクレチン)、(コレシストキニン=CCK)がある。
●ガストリンは、(胃幽門部粘膜)にあるガストリン分泌細胞から分泌され、胃の壁細胞に作用して胃酸分泌を(促進)する。
●セクレチンは、膵臓の外分泌細胞に作用して(重炭酸イオン)に富む膵液の分泌を(促)す。
●コレシストキニンは、膵臓の外分泌細胞に作用して酵素に富んだ膵液の分泌を(促)す。
●コレシストキニンは、(胆嚢)を収縮させ、(胆汁)の放出をさかんにする。
●GIPは、(胃)液の分泌運動を(抑制)する。
D.吸収
a.小腸吸収の機序
●小腸粘膜には多数のしわ(輪状ヒダ)があり、その表面には無数の(腸絨毛)が突出している。
●絨毛の表層は1層の上皮細胞で、この細胞に(微絨毛)があり、粘膜上皮の表面積がきわめて大きい。
●吸収は(受動)輸送および(能動)輸送による。
b.各種栄養素の吸収
(1)糖質の吸収
●糖質は単糖類の(グルコース=ブドウ糖)、(ガラクトース)、(フルクトース=果糖)に分解されて吸収される。
●グルコースとガラクトースは、(能動)輸送により速やかに吸収され、(門脈血)中に入る。
●フルクトースは(促進拡散)によって吸収される。
(2)タンパク質の吸収
●タンパク質は、(アミノ酸)に分解かる拡散や能動輸送で吸収される。
(3)脂肪の吸収
●脂肪は(脂肪酸)と(モノグリセリド)に分解される。
●脂肪は、胆汁酸で(脂質集合体=ミセル)を作って(拡散)によってリンパ管に入る。
(4)水と電解質の吸収
●(水分)は受動的に吸収される。83%は(小腸)で、16%は大腸で吸収される。
●ビタミンA、D、E、Kは、(脂溶性)で、脂肪と同様にミセルとなって小腸上皮細胞膜に達し、(拡散)によって吸収される。
●ビタミンB₁₂は胃粘膜から分泌される(内因子)と結合して吸収される。
E.肝臓の働き
(1)物質代謝
●グルコースは肝臓で(グリコーゲン)に合成され肝臓内に貯蔵される。
●肝臓内のグリコーゲンは血糖低下で(グリコース)に分解され血中に出る。
●肝臓でアミノ酸から(アルブミン)や(フィブリノゲン)などが合成される。
●肝臓では脂肪の合成と分解、(コレステロール)の生成をする。
●肝臓では各種(ミネラル)や無機質を貯蔵したり、放出をする。
●肝臓の肝細胞で(胆汁)が生成される。
●肝臓では血中の有害物質を無毒化する(解毒)作用がある。
●肝臓ではフィブリノゲン、プロトロビン等の(血液凝固調節)因子を生成する。
●肝臓内の(クッパー)細胞〔マクロファージの一種〕の食作用によって異物を取り除く。
消化の概要
●消化器系の構造には、消化管と消化腺に分かれる。
●消化管は口腔に始まり、咽頭➡食道➡胃➡小腸➡大腸➡肛門までをいう。
●消化管の運動による機能を、機械的消化作用という。
●消化管の運動は、筋肉系の動きで食物を粉砕・輸送・混和する。
●消化腺で行われる消化を、化学的消化作用という。
●消化腺では、消化液分泌(酵素)によって栄養素を加水分解する。
●消化腺は、唾液腺、膵臓、肝臓、胆嚢がある。
●唾液腺は、耳下腺、舌下腺、顎下腺がある。
●唾液腺の神経は、顎下腺と舌下腺は顔面神経、耳下腺は舌咽神経である。
●消化管壁は一般に内側から、粘膜、粘膜下層、筋層、漿膜の順番に配列する。
●消化管の粘膜は、内腔から順に粘膜上皮、粘膜固有層、粘膜筋板の三層である。
●粘膜下層と筋層の間に、粘膜下層神経叢(マイスネル神経叢)が存在している。
●消化管の筋層は平滑筋で、内輪走筋と外縦走筋がある。
●内輪走筋と外縦走筋の間に、筋層間神経叢(アウエルバッハ神経叢)がある。
●カハールの間質細胞(ICC)がペースメーカー細胞となり、消化管の律動的な自動運動を発生する。
●食べ物は口腔内で咀嚼運動で砕かれ、唾液と混和されて食塊となる。
●咀嚼運動は、咀嚼筋・舌・口唇・頬の働きによる。
●下顎を動かす咬筋、側頭筋、外側翼突筋、内側翼突筋は三叉神経の支配を受ける。
●唇や頬の顔面筋は顔面神経の支配を受ける。
●舌筋は舌下神経の支配を受ける。
●咀嚼運動は随意的に開始されるが、一度始めると自動的に繰り返される。
●嚥下によって、食塊や液体は食道を通して胃に送る。
●嚥下中枢は、延髄である。
●嚥下は、第1相の口腔相、第2相の咽頭相、第3相の食道相の3つの相に分かれる。
●口腔相は、随意運動である。
●口腔相では、口唇を閉じて口腔内圧を上げ、舌を後上方に押し上げて食塊を咽頭へ押し出す。
●咽頭相は、反射運動(不随意運動)である。
●咽頭相では、食物が鼻に入らないように軟口蓋の挙上し、咽頭内圧をが上昇する。
●咽頭相では、気管に食物が入らないように喉頭蓋が閉鎖され、食道の入り口が開く。
●咽頭相では、口腔に食物が戻らないように舌根が押し上げられ、食道に押し出す。
●咽頭相では、喉頭蓋が閉鎖するため、1~2秒呼吸が止まる。
●食道相は、反射運動(不随意運動)である。
●食道相では、食塊を胃に運ぶために食道の蠕動運動か行われる。
●食塊は嚥下運動により咽頭と食道を通って胃に送られる。
●胃の入口を噴門、出口を幽門という。
●胃の大部分を占めるのは、胃体である。
●幽門に向かって細くなった幽門部を幽門前庭という。
●噴門よりも左上に横隔膜に沿って膨れ出た部分を胃底という。
●胃で食塊は胃液と混和され、タンパク質が消化される。
●胃に食物が入ると、反射性に胃壁は弛緩し、胃内圧を高めずに胃内容量を増やす=受け入れ弛緩
●胃で食塊は胃液と混和され、糜粥となる。
●蠕動運動は、胃体上部に始まり、ゆっくりと幽門に向かって伝えられる。約3回/分
●食間期伝播性収縮(IMC)とは、空腹状態の胃は約90分の周期で激しい収縮を起こすことである。
●胃の運動は、胃壁に内在する壁内神経叢によって調節される。
●壁内神経叢とは、筋層間神経叢のアウエルバッハ神経叢と粘膜下神経叢のマイスネル神経叢である。
●胃の運動調節は、局所性には平滑筋自体の伸展されると収縮するという性質による。
●胃の運動調節は、外因性に自律神経ホルモンによる調節も関与する。
●胃運動の調節は、神経性調節とホルモン調節の2つがある。
●神経性の反応は早く、ホルモンの作用は中・長期に作用する。
●神経性調節では、消化から排尿・排便まで、副交感神経優位で行われる。
●神経性調節の蠕動運動は、副交感神経(迷走神経)で促進し、交感神経で抑制される。
●小腸ー胃反射とは、十二指腸に糜粥が入ってくると十二指腸壁が伸展し、胃運動は抑制される。
●内分泌のホルモン調節では、胃抑制ペプチド(GIP)が分泌される。
●胃抑制ペプチド(GIP)は、十二指腸に脂肪の多い食物が入ると十二指腸粘膜から血中に分泌される。
●胃抑制ペプチド(GIP)の作用は、胃の運動を抑制する。
嘔吐のメカニズム
●嘔吐中枢は、延髄と化学受容器引き金帯である。
●化学受容器引き金帯とは、血中のある種の薬物や毒物に反応して嘔吐中枢に刺激を送り、嘔吐を誘発する。
●嘔吐時の順番は、悪心➡唾液分泌➡食道・胃の弛緩➡噴門開口➡痙攣的吸息運動➡横隔膜・腹筋収縮➡腹腔内圧上昇➡嘔吐(胃の内容物を外へ吐き出す)
●嘔吐中は、喉頭蓋は閉鎖して吐物の気道内流入を防ぐ。
小腸の概要
●小腸は、十二指腸、空腸、回腸よりなる。
●小腸運動の種類は、分節運動、振子運動、蠕動運動である。
●分節運動では、輪走筋が内容物混和をする。
●分節運動は、平滑筋の筋原性による自動性である。
●振子運動では、縦走筋が内容物混和をする。
●振子運動は、小腸のみで見られる運動である。
●蠕動運動では、主に輪走筋が糜粥の移送をする。
●蠕動運動は、壁内神経叢(アウエルバッハ神経叢、マイスネル神経叢)による自動性である。
●自動性とは、神経性調節がなくても自動的に行われる。
●小腸運動は、副交感神経(迷走神経)で亢進(促進)し、交感神経で抑制される。
●小腸で内容物は最終的に吸収可能な栄養素になる。
●栄養素と水・電解質は大部分小腸で吸収される。
回盲弁の開閉
●回腸から盲腸へと連なる回盲部には、盲腸内に突出した括約筋からなる回盲弁がある。
●回盲弁は、盲腸内に突出した2枚の粘膜ヒダである上唇と下唇から成る。
●回盲弁は、バウヒン弁あるいはボーアン弁ともいう。
●小腸内容物の量によって、回盲弁が開閉する。
●小腸内容物が少量のときは、回盲弁の括約筋収縮により弁は閉じている(小腸内容物を長く滞在)
●小腸内容物多くなると、回盲弁の括約筋弛緩により弁は開き、回腸の蠕動運動が促進(盲腸へ送る)
●胃ー回腸反射は、胃への食物侵入➡回腸蠕動運動促進➡回盲弁が開き、胃からの食物を受入れるため小腸を空っぽにする。
●小腸ー胃反射は、小腸に食物が送られると胃運動が抑制される。
大腸の概要
●大腸は、盲腸、結腸、直腸よりなる。
●大腸運動は、分節運動と蠕動運動である。
●分節運動は、主に横行結腸で行われ、腸内容物を攪拌し吸収を促す。
●蠕動運動は、ゆっくり弱い運動で、内容物を輸送する。
●蠕動運動は、盲腸、上行結腸、横行結腸、S状結腸で行われる。
●盲腸~上行結腸で行われる蠕動運動は、逆蠕動といい水分をよく吸収する。
●横行結腸の終わり部分~S状結腸で行われる蠕動運動は、大蠕動である。
●胃ー大腸反射とは、摂食後数分以内に起こる大蠕動である。
●大蠕動は、胃に食べ物が入ると大腸をきれいにする為、大きな蠕動運動を起して直腸へ送り出す。
●大腸運動の調節は、自律神経支配と体性運動神経支配のものがある。
●大腸へ送られた内容物は水分等の吸収を受け直腸に送られる。
排便
●排便・排尿には、下腹神経、骨盤神経、陰部神経の3つがセットで働く。
●大腸運動の自律神経支配は、交感神経が下腹神経、副交感神経が骨盤神経、体性神経が陰部神経が働く。
●大腸運動は直腸平滑筋である。
●交感神経亢進(下腹神経)のとき、大腸運動は抑制(弛緩)し、内肛門括約筋は収縮する。
●副交感神経亢進(骨盤神経)のとき、大腸運動は促進(収縮)し、内肛門括約筋は収縮する。
●外肛門括約筋は、体性運動神経で、自分の意志で働く随意筋である。
●体性運動神経支配は、陰部神経が働く。
●陰部神経が亢進(促進)されると、外肛門括約筋は収縮する。
●陰部神経が抑制されと、外肛門括約筋は弛緩する。
●筋肉は収縮・弛緩といい、神経は促進または亢進・抑制という言い回しになる。
●畜便では、交感神経=下腹神経となる。
●排便では、副交感神経=骨盤神経となる。
●排便時は、副交感神経優位でリラックスして行われる。
●骨盤神経(骨盤内臓神経)は、副交感神経として、泌尿器で排尿神経、生殖器で勃起神経、消化器で排便神経として知られる。
●排便反射の流れは、直腸が伸展(便が侵入)➡求心路の骨盤神経が活動亢進➡排便中枢の腰仙髄(腰髄+仙髄)➡3つの遠心路➡排便となる。
●3つの遠心路は、骨盤神経、下腹神経、陰部神経である。
●副交感神経の骨盤神経亢進➡S状結腸・直腸収縮
●交感神経の下腹神経が抑制➡内肛門括約筋弛緩
●大脳からの司令を受ける陰部神経抑制➡外肛門括約筋弛緩
●陰部神経は体性神経であるため、意識的に外肛門括約筋を収縮させている。
消化液
糖質
●糖質を分解する消化酵素は、口腔では唾液アミラーゼ、膵臓では膵アミラーゼ、腸液ではマルターゼ、スクラーゼ、ラクターゼが分泌される。
●唾液アミラーゼは、デンプンを二糖類のマルトース(麦芽糖)に分解する。
●膵アミラーゼは、デンプンを二糖類のマルトース(麦芽糖)に分解する。
●腸液のマルターゼは、二糖類のマルトース(麦芽糖)を単糖類のグルコース&マルトースに分解して、吸収できる形にする。
●腸液のスクラーゼは、二糖類のスクロース(ショ糖)を単糖類のフルクトース(果糖)&グルコースに分解して吸収できる形にする。
●腸液のラクターゼは、二糖類のラクトース(乳糖)を単糖類のガラクトース&グルコースに分解して吸収できる形にする。
タンパク質
●胃液のペプシンは、タンパク質をオリゴペプチドに分解する。
●膵液のトリプシンとキモトリプシンは、オリゴペプチドをペプチドに分解する。
●腸液のアミノペプチダーゼは、ペプチドをアミノ酸に分解する。
●アミノ酸は、筋肉の元となる。
脂肪
●脂肪=中性脂肪=トリグリセリド
●膵液のリパーゼは、脂肪を脂肪酸とモノグリセリドに分解する。
●トリグリセリドとは、グリセロール(グリセリン)に3つの脂肪酸がくっついている構造している。
●リパーゼによって、グリセロールに脂肪酸が1つ付いたモノグリセリドと分解されて取れた2つの脂肪酸に分けられる。
唾液
●唾液腺は、耳下腺、顎下腺、舌下腺である。
●耳下腺は舌咽神経、顎下腺と舌下腺は顔面神経が支配している。
●唾液の成分は、水分、唾液アミラーゼ、プチアリン、ムチン、粘液である。
●消化酵素であるアミラーゼは、デンプンをマルトースに分解する。
●ムチンは、食塊を滑らかにし、咀嚼・嚥下をしやすくし、口腔粘膜の保護をする。
●唾液分泌中枢は、延髄である。
●副交感神経・交感神経共に分泌を促進する。
●副交感神経は、漿液性の唾液を分泌する。
●交感神経(頸部交感神経)は、粘液性の唾液を分泌する。
●食塊による口腔への直接の刺激が原因の反射を、無条件反射という。
●本来の感覚ではない刺激が原因(眼や耳からの感覚性刺激)による反射は、条件反射という。
胃液
●胃液の成分は、水分、消化酵素、ムチン、電解質、ビタミンB12を吸収するための内因子である。
●胃液の特徴は、無色透明で、phが1~2の強酸、一日に1~3ℓ分泌される。
胃腺の構造
●胃腺の分泌細胞は、主細胞、壁細胞、粘液細胞(副細胞)、内分泌細胞である。
●主細胞は、ペプシノゲンを分泌する。
●ペプシノゲンは、塩酸の働きによりペプシンとなる。
●ペプシンは、タンパク質をオリゴペプチドに分解する。
●壁細胞は、塩酸(HCL)を分泌する。
●塩酸は、ペプシノゲンを活性化してペプシンにする。
●塩酸は、胃内容物の殺菌、消毒作用がある。
●塩酸は、十二指腸におけるセクレチン分泌を促進する。
●門脈血に吸収された栄養素は、肝臓に入って代謝される。
●肝臓は胆汁の生成、栄養素の代謝や解毒作用をもつ。
●腹腔は壁側腹膜と臓側腹膜に覆われる。
●視床下部には摂食行動を調節する中枢がある。
代謝と栄養の概要
●細胞内で行われる物質の合成と分解を代謝という。
●代謝により作られた物質は生命活動に利用される。
●生命を維持するのに必要な最小限の代謝を基礎代謝という。
●栄養素には、糖質、脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラルがある。
●糖質はエネルギー源となる。
●脂質はエネルギー源、細胞の膜の構成成分となる。
●タンパク質は細胞の構成成分、エネルギー源となる。
●ビタミン、ミネラルは、身体の機能維持に働く。
消化器で使うワードの同義語
●グルコース = ブドウ糖
●ミネラル = 無機質
●唾液アミラーゼ = プチアリン
●幽門部 = 幽門前庭
●副細胞 = 頸部粘液細胞
●GIP = 胃抑制ペプチド
●陰窩 = リーベルキューン線 =腸腺
●ブルンネル腺 = 十二指腸腺
●コレシストキニン = CCK
●ビリルビン = 胆汁色素
●マルトース = 麦芽糖
●担体 = トランスポーター =輸送体
●カイロミクロン = キロミクロン
●肝星細胞 = 伊東細胞
●後腹膜臓器 = 腹膜後器官
●炭水化物 = 糖質
●フルクトース = 果糖
●スクロース = ショ糖
●ラクトース = 乳糖
●セルロース = 食物繊維
●トリグリセリド = 中性脂肪
●グリセリン = グリセロール
●LDL = 低密度リポタンパク質 = 悪玉コレステロール
●HDL = 高密度リポタンパク質 = 善玉コレステロール
●ナトリウム = Na
●クロール = Cl
●カリウム = K
●カルシウム = Ca
●リン = P
●鉄 = Fe
●亜鉛 = Zn
●マグネシウム = Mg
●マンガン = Mn
●銅 = Cu
●ヨウ素 = I
●セレン = Se
解剖学
第10章 運動器系
Ⅱ.全身の骨格
1.脊柱
1) 脊柱の構成
●脊柱は体幹の支柱をなす骨格で、関節により32~34個の(椎)骨からなる。
●頸部の椎骨を(頚)椎、胸部の椎骨を(胸)椎、腰部の椎骨を(腰)椎という。
●骨盤部の椎骨を(仙)椎および(尾)椎という。
●5個の仙椎は融合して(仙骨)となり、3~5個の尾椎も1個の(尾骨)となる。
●頚椎(7)個、胸椎(12)個、腰椎(5)個、仙骨(1)個、尾骨(1)個である。
(1)脊柱の機能
●脊柱の中には中枢神経の(脊髄)が収納され、その保護骨格でもある。
(2)椎骨の基本形態
●椎骨の中心要素は円柱状の(椎体)と、その後方にあるアーチ状の(椎弓)である。
●椎体と椎弓の間に囲まれた空間を(椎孔)という。
●椎弓の両側には左右一対の(横)突起が、後方には無対の(棘)突起がでる。
●椎弓からは棘突起(1)個、横突起(2)個、上関節突起(2)個、下関節突起(2)個の、4種7個の突起が出る。
(3)椎骨の連結
●上下の椎骨は(椎間円板)、(椎間関節)、数種の(靭帯)により連結され脊柱となる。
●椎間円板は椎体と椎体の間を(軟骨)性結合させる。
●椎間円板の内部では(線維)軟骨が層板をなして重なった線維輪が、中心部にあるゼリー状の軟組織である(髄核)を包んでいる。
●(椎間)関節は上位の椎骨の下関節突起と下位の椎骨の上関節突起とが対面している。
●椎体と椎間円板の前面に(前縦)靭帯が、後面に(後縦)靭帯が密着し縦に連結する。
●椎弓の間には(黄色)靭帯が連結する。弾性線維に富み(黄色)く見える。
●棘突起間を結ぶ靭帯を(棘間)靭帯という。
●棘突起の先端を縦に結ぶ靭帯を(棘上)靭帯といい、特に頸部では(項)靭帯という。
(4)脊柱管
●複数の椎骨が連なると椎孔も黄色靭帯を介して連結し合い、脊柱の内部に(脊柱管)というトンネルをつくり(脊髄)を収納する。
(5)椎間孔
●椎骨が連結されることにより、上位椎骨にある下椎切痕と下位椎骨にある上椎切痕は向かい合って椎間の側面〔椎間円板と椎間関節の間〕に(椎間孔)をなす。
●脊柱管は椎間孔を通じて左右両側に開き(脊髄)神経を通す。
2) 各部の椎骨
(1)頚椎
●第1頸椎を(環)椎、第2頸椎を(軸)椎、第7頸椎を(隆)椎という。
●C1~C6(横突孔)には上行して脳に至る(椎間)動脈が通る。
●環椎は(椎体)を欠き、椎骨中央部には大きな(椎孔)が開くリング状の椎骨である。
●環椎の椎孔の前後を囲む部分をそれぞれ(前弓)、(後弓)という。
●環椎の後頭骨と連結する凹面を(上関節)窩といい(環椎後頭)関節をなす。
●軸椎は椎体の上方に突き出した(歯)突起を有する特徴的な頸椎である。
●環椎と軸椎の関節であり、(正中環軸)関節と(外側環軸)関節とからなる。
●外側環軸関節は、(平面)関節である。
●正中環軸関節は、軸椎の歯突起が環椎の椎孔に入って前弓の内面(歯突起窩)と連結したものである。
●正中環軸関節は、歯突起を運動軸として環椎を横に回旋する(車軸)関節である。
●正中環軸関節は、頭蓋と環椎とを一括して、左右に回旋する。この運動で歯突起が(後)方にずれないように、環椎の椎孔内には(環椎十字)靭帯が張っている。
●環椎十字靭帯は、歯突起を(後)面から十字形に交叉しておおう2つの靭帯で、環椎横靭帯と(縦束)である。
●隆椎の(棘突起)は垂直に後ろに出るので、頭を前に深く倒すと後頸部で観察される。
(2)胸椎
●胸椎は、左右12対の肋骨と胸骨と共に(胸郭)をつくる。
●肋骨との関節は、椎体外側面の後面にある(肋骨)窩と横突起の先端にある(横突肋骨)窩で行う。
(3)腰椎
●腰椎の椎体は太く大きく、(椎間円板)も厚く変化する。
●肋骨に相当する部分は腰椎の側方に大きく突出して、一見すると横突起のような(肋骨)突起になる。
●本来の横突起は(副)突起として残る。
●腰椎の椎間関節の可動域は、胸椎より(高)い。
●上関節突起の上外面は、筋の付着部としてわずかに盛り上がった(乳頭突起)となる。
(4)仙骨
●仙骨上面は仙骨(底)といい、前端を(岬角)という。下端は仙骨(尖)という。
●仙骨の各椎体は癒合することで椎間円板を失い仙骨前面に(横線)として残る。
●棘突起は融合して(正中仙骨稜)を、椎間関節は癒合して(中間仙骨稜)を形成する。
●椎孔は癒合により(仙骨管)をつくる。
●仙骨前面の前仙骨孔から(仙骨神経前)枝が、後面の後仙骨孔から(仙骨神経後枝)が出る。
●仙骨外側面には寛骨〔腸骨〕と関節する(耳状)面がある。
(5)尾骨
尾椎は3~5個の小さな骨であり通常それが融合して1個の(尾骨)となっている。
3)脊柱の湾曲
●脊柱側面から見ると、頸椎は(前)弯、胸椎は(後)湾、腰椎は(前)彎、仙骨は(後)湾し、全体的にゆるいS字型を取る。
2.胸郭
1)胸骨
●胸骨は上方より、(胸骨柄)、(胸骨体)、(剣状突起)の3部よりなる。
●胸骨上縁正中部の切れ込みを(頸切痕)といい体表から触れる。その両端には鎖骨との関節面である(鎖骨切痕)がある。
●胸骨と肋骨との関節部位である(肋骨切痕)は7対あり、胸骨柄と胸骨体の結合縁はわずかに前に突き出し(胸骨角)という。
●胸骨角には第(2)肋骨の肋軟骨が付く。
●胸骨の(剣状突起)は鳩尾の部分に見られる。
2)肋骨
●肋骨頭は胸椎体と(肋骨頭)関節をなす。肋骨頭に続く細い部分を(肋骨頸)という。
●肋骨頸と肋骨体の移行部は肋骨(結節)と呼ばれ、胸椎の横突起先端と(肋横突)関節をなす。
●第1~7肋骨は(真肋)といい、第8~12肋骨は(仮肋)という。
●第7~10肋軟骨は連結して(肋骨弓)をつくる。
●第11~12肋骨は(浮遊肋)ともいう。
●外肋骨筋は(吸気)筋で、内肋間筋は(呼気)筋である。安静呼吸では(外)肋間筋や横隔膜が弛緩するだけで呼気は行える。(内)肋間筋は働かない。
●肋骨体の湾曲度は、肋骨結節の少し外側で急に変わる。この部分を(肋骨角)という。その外面に(腸肋筋)が付着する。
●肋骨体の下縁には溝があり、(肋骨溝)という。これに沿って、(肋間)動脈・神経が通る。
3)胸郭の全体像と運動
●第1胸椎~第1肋骨~胸骨柄の上縁は(胸郭上口)をなす。
●(肺)の上端は胸郭上口を第1肋骨の上方数cmほど出ている。
●肋骨の動きによる呼吸運動を(胸式呼吸)という。
●第12胸椎~第12肋骨~第11肋骨先端~肋骨弓~剣状突起下端は(ドーム状=円蓋状)をなし、横隔膜の起始となる。
3.上肢の骨格
●上肢の骨には体幹と連結する(上肢帯)と、肩関節より遠位の(自由上肢)に分かれる。
1)上肢帯の骨
(1)鎖骨
●鎖骨の内側端は(胸骨)端と呼ばれ、胸骨柄と(胸鎖)関節をなす。
●鎖骨の外側端は(肩峰)端と呼ばれ、肩甲骨の肩峰と(肩鎖)関節をなす。
(2)肩甲骨
●肩甲骨は逆三角形で、頂点部分は(上)角、(下)角、(外)側角であり、三辺は(上)縁、(内)側縁、(外)側縁という。
●肩甲骨が上腕骨と関節する凹みを(関節窩)という。凹みの上端を(関節上結節)、下端を(関節下結節)といい、それぞれ上腕(二)頭筋と上腕(三)頭筋が付着する。
●関節窩の上方から前方に突き出しているのは(烏口)突起であり、その基部にある切痕を(肩甲)切痕といい(肩甲上)神経を通す。
●肩甲骨の前面の浅いくぼみは(肩甲下窩)で肋骨に面する。
●肩甲骨の後面には斜め上方に走る(肩甲棘)が出て外側端は(肩峰)となる。
●肩甲棘の上下の凹みはそれぞれ(棘上窩)、(棘下窩)という。
2)自由上肢の骨
(1)上腕骨
●上腕骨の(上腕骨頭)と肩甲骨の(関節窩)は肩関節をなす。
●上腕骨頭の下には結節があり、それぞれ(大結節)、(小結節)という。
●大結節からは(大結節稜)が、小結節からは(小結節稜)が下方に続き、大結節と小結節の間には(結節間溝)がある。
●結節間溝には、(上腕二頭筋長頭)の腱が走る。
●上腕骨体上部の外側にはV字型の粗面があり(三角)粗面という。
●上腕骨体後面に斜めに走る浅い溝を(橈骨神経)溝という。
●上腕骨下端は(外側上顆)、(内側上顆)となって突出し体表から触れる。
●内側上顆の後面には(尺骨神経)溝がある。
●上腕骨の上腕骨(小頭)が橈骨と関節し、上腕骨(滑車)が尺骨と関節する。
(2)前腕の骨
●前腕は内側の(尺骨)と外側の(橈骨)からなる。
●尺骨上端は(肘頭)で、前面の滑車切痕と上腕骨滑車が(腕尺)関節をなす。
●尺骨上端は(肘頭)で、前面のの(滑車切痕)と上腕骨滑車が(腕尺)関節をなす。
●尺骨の滑車切痕の下端前方に釣り針状に突出するのは(鉤状)突起である。
●尺骨の(橈骨切痕)と橈骨の橈骨頭が、(上橈尺)関節をなす。
●尺骨の尺骨粗面には(上腕)筋がつく。
●尺骨下端を(尺骨頭)といい、橈骨と(下橈尺)関節をなす。
●尺骨下端の内側端には(茎状)突起が突出する。
●橈骨上端は(橈骨頭)といい、上腕骨小頭と(腕橈)関節をなす。
●橈骨頭の側面は尺骨の橈骨切痕に対する(関節環状)面になる。
●橈骨の(撓側粗面)には上腕二頭筋がつく。
●橈骨下端の外側端には(茎状)突起が突出する。
●橈骨の下面は手根骨に対する(手根関節面)がみられる。
(3)手の骨
●手根骨近位列には(舟状)骨、(月状)骨、(三角)骨、(豆状)骨が並ぶ。
●手根骨遠位列には大菱形骨、小菱形骨、有頭骨、有鉤骨が並ぶ。
●遠位列の手根骨は中手骨と(手根中手)関節=(CM)関節をなす。
●(大菱形)骨は第中手骨とCM関節を構成し、関節の形状は(鞍)関節である。
●中手骨は指骨と(中手指節)関節=(MP)関節をなす。
●中手骨と指骨の関節の形状は(顆状)関節である。
●指骨は近位から基節骨、中節骨、末節骨といい母指は中節骨がない。
●指骨どうしの関節は(指節間)関節=(IP)関節といい近位の関節を(PIP)関節、遠位の関節を(DIP)関節という。関節の形状は(蝶番)関節である。
3)上肢の関節
(1)胸鎖関節
●(鎖)骨と(胸)骨は胸鎖関節をなし、体幹と上肢を結ぶ唯一の関節である。
●胸鎖関節の間には(関節円板)を有する。
(2)肩鎖関節
●(鎖)骨の外側端と(肩甲骨)の肩峰は肩鎖関節をなす。
(3)肩関節
●肩関節の関節形状は(球)関節で関節窩の深さを補う(関節唇)を有する。
●肩関節は上腕骨の(上腕骨頭)と(肩甲)骨の関節窩がつくる関節である。
(4)肘関節
●肘関節は肘部で(上腕)骨、(尺)骨、(橈)骨が連結しあう複関節である。
●肘関節は(腕尺)関節、(腕橈)関節、(上橈尺)関節よりなる。
●上腕骨と尺骨の関節形状は(蝶番)関節である。
●上腕骨と橈骨の関節形状は(球)である。
●(橈骨輪状)靭帯により橈骨頭が橈骨切痕より離れないようにしている。
(5)橈骨・尺骨の連結
●尺骨と橈骨の関節は前腕上端の(上橈尺)関節、前腕下端の(下橈尺)関節で関節の形状は(車軸)関節である。
(6)橈骨手根関節
●(舟状)骨、(月状)骨、(三角)骨との橈骨の手根関節面は(橈骨手根)関節をなす。
●橈骨手根関節の関節形状は(楕円)関節である。